ハッと我に返ると、
公園のブランコに座っていた。


ケンジが、

私の顔を覗き込んでいた。



「ケンジ…」



名を呼ぶと、

ケンジは満足そうに微笑んだ。



「やっと思い出したか。」



ケンジはそう言って、

手を伸ばして来た。



髪を撫でられて、
私はその手を払った。


ケンジは苦笑した。



「死に切れなかった。ゴメン。」



ケンジの声が震えた。


「私、行方不明になってる?」



言うと、

ケンジは頷いた。




「アヤメの身体、そこに埋まってるからな。」





ケンジの指差したのは、


私の足元。







私は待っていた。

ケンジが後を追って来るのを。

待っていた。


誰もいない、

誰も来ない、

この公園で。