私は、あの部屋にいた。



蒸し暑い。


暑いのは、

私の上に誰かが乗っているからかも知れない。


最中に飛ばされた私の身体は、

急な快感に震えた。



「っっ!」



思い出せ。


彼の声が頭に響いた。


快感に溺れながら、

私は上に乗っている男を見た。



「ケンジ…く…ん」



知っている。


知っている。


思い出せ、

そう言った彼が、ケンジ。




荻原健次。




グッと息が詰まった。


頭が膨張する感覚。


ケンジの手が、

私の首を絞め付けている。




「追い掛けるよ、アヤメ。一緒に死のう。」




何も言えなかった。



首を絞められているから。



涙が溢れて、シーツを濡らす。





苦しい。


苦しい。


ママ…。




意識が混濁する。


もがく私の目の端に、

包丁が目に入った。



彼はあれで死ぬ気だろうか。




苦しい。

苦しい。




苦しい。