つい叫んでしまった。
いや、決して恐怖の意味ではなく、驚きの意味で。
なんだか俺の中で高鳴っていた。
目の前で姉貴が男とち、ちゅーを!!
むず痒い思いだ。
しかもよくみると泣いているではないか。
家でもめったに泣かない姉が見知らぬ男に泣いている。
父が娘を嫁に出す気分だ!
シスコンじゃないけど悔しい!!!!
「ってことがあったんだ、菜奈…。」
あまりの衝撃に俺は幼なじみの三嶋菜奈に相談した。
「…で、オチは?」
菜奈は面白い話を期待していたようだ。
切り返しが冷たい。
「オチとかじゃない!!俺は姉貴を心配して!!」
「そういうのシスコンって言うんだよ?しかも隆樹くんの方が女々しいよ。頑張りなよ。」
ざっくりとくる菜奈の言葉。
分かってるんだ、俺が女々しいなんて!
「…菜奈冷たい…」
「…私のお兄ちゃんもシスコンなの。お姉さんの代理で言うけど、正直言って迷惑だよ?」
「…」
「それに、喜んでいんじゃないの?雄々しかったお姉さんに頼れる存在ができて。隆樹くん言ってたじゃない、姉貴は1人で抱え込みやすいって。」
菜奈は学年でもモテる。
女子力は姉貴の数万倍だ。
だから、女目線での意見をハッキリ言ってくる。
「………複雑だ…」
これから俺は当分、頭を抱える事になる。