ティアナの部屋の前に立つ。
目の前の扉の向こうから確かに聞こえる少女の声。
彼はゆっくり扉を開けた。
「ティアナ…?」
呼び掛けた先にいた人物。
ベッドに座り、虚ろな表情で歌を歌う愛しい少女。
「ティアナ…!」
もう一度呼ぶと、彼女は体をピクリと反応させた。
そしてカミルを見つめる。
「ティアナ」
無だった表情が笑みに変わった。
「あ、あぁ…!」
少女の瞳から綺麗な雫が零れ落ちる。
「アンドラス…!!」
姿は違えど、彼女にはわかった。
喜びと愛しさで前が見えない。
ベッドに泣き崩れる少女を、人間になった悪魔はそっと抱きしめた。
「お待たせ、ティアナ」
自分だけの少女に甘く囁く。
「これからは、ずっと一緒だよ」
もう放さない。
迷わない。
同じ時を彼女と二人で歩くことができるから。
「アンドラス…あのね…」
何か言おうとして恥ずかしそうに頬を染める。
「何?」
彼女は真っ直ぐに緑の瞳を見つめて、言った。
――大好きだよ…