屋敷の中に入り、カミルはまず居間を覗いた。
(ここにはいないか…)
他に行こうとしてテーブルの上に置かれた地図に気づいた。
(ここでティアナに地図を見せてから、塔に行ったんだよね…)
死ぬ前のことを思い出す。
「あれ…?確か、ティアナは記憶が戻ってなかったよね…?」
それでは、自分が会っても昔のように「知らない」と繰り返されるだけではないか。
彼は青くなった。
(しかも、ティアナは生きてるの!?今気がついたけど、あれからかなり時間経ってるよね!?)
カミルは静かに居間の扉を閉めた。
手から冷や汗が出る。
「ティアナ…」
不安に震える声。
不意に、歌が耳に届いた。
「ティアナ…!?」
二階へ続く階段から聞こえてくる。
(これは、僕が歌ってあげた讃美歌!)
彼は走って階段を上がった。