両の手で頭を押さえるカミル。

一秒。

二秒。

三秒。

次の瞬間――。

「フフフ…アハハハハハ!!!!!」

突如、不気味に笑い出した。

「アンドラス…」

記憶を返した天使ミカエルが前世の彼の名前を呼ぶ。

「何なのさミカエル。せっかく忘れてたのに…。僕に記憶を戻して、楽しい?」

妖しく光る緑色の瞳。

金色の瞳ではなくなったが、その秘められた美しさは変わらない。

「神の御心だ」

「神のご計画!?ハッ!笑うしかないね!悪魔と人間の恋を応援する神様!?とうとうボケちゃった?」

天の主を嘲笑うカミルにミカエルが反論した。

「違う!!いいか、アンドラス。神は悪魔の恋を応援したのではない。人間の愛を守ったのだ」

「人間の愛…?ティアナの愛ってこと?」

この何気ない問いにミカエルは溜息をついた。


「愚か者が。今はお前も人間だろう」


瞠目する。

カミルは目線を泳がせた。

何と答えようか迷う。


「…そうか…そうだったね。忘れてたよ」


(今、僕は人間なんだ…。ティアナと同じ…人間…)


「お前の求めているものは屋敷にあるだろう…行け」

「言われなくても…!」

命令口調のミカエルにムッとしつつも、彼は駆け出した。