影の町に日の光が降り注ぐ。
カミルがシャッテンブルクに到着したのは午後二時を回った頃だった。
「ここか…」
瀕死の調査隊が発見された町の入り口を通り抜け、中心へ進む。
一歩踏み出すのにも慎重になる。
「教授…!」
小声で呼んだ時だった。
「主よ」
若い男の声が聞こえた。
「主よ…。お久しぶりです」
広場に向かう道の途中、青い髪の青年が佇んでいた。
「貴様は!?」
悪魔なのか。
教授をどこへやったのだ。
色々な問いが浮かんだが、青年の言葉に遮られた。
「ティアナ様が待っていますよ」
「ティア、ナ…?」
なぜか懐かしく感じられた名前。
郷愁を味わうような感覚に戸惑っていると、後方から声が降ってきた。
「カミル・バルツァー。いや…アンドラス。お前に記憶を返そう」
「え!?」
(背後にも悪魔が!?)
反射的に振り返る。
すると――。
「くっ…!な、なんだ…!?」
視界が真っ白になった。