「喜ばしいことだが、このままではアンドラスの魂が消滅するぞ」

マルコシアスが低い声音で言った。

「ですが、どうしろと?手立てはあるのですか?」

サリエルが問い掛けると、ライナルトが進み出た。

「俺がどうにかしてみる」

「ライナルト…!」

アウレリアが不安げに見つめる。

彼は安心させるように微笑んだ。

今、彼は兜を外しているので美しい翡翠の瞳がよく見える。

「ティアナ、君のためにアンドラスを人間に転生させるよ」

「そんなこと、できるの!?」

驚くアウレリアの隣で、バシンはライナルト自身の心配をした。

「悪魔を転生させるなんざ、まずいんじゃないか?」

「堕天は覚悟の上だ。アンドラスの魂が消滅する前に天界へ持っていく」

アウレリアには見えないが、天使や悪魔にはわかるらしい。

ライナルトは壊れものを扱うようにアンドラスの魂を体から掬い上げた。

「俺は天へ戻る。上手くいったら、また報告に来るよ」

アウレリアを見つめてそう言うと、ライナルトは翼を広げ空へと羽ばたいていった。