彼は居間にある椅子に座るようティアナに勧めた。

「祖父はいつも古い友人のところに遊びに行って、帰ってくるのが夕方なんだ。後で会えるよ」

そこまで言うと、ライナルトの柔らかい表情が真剣なものに変わった。

「それで…ティアナ、もう一度聞くけど…。本当に俺と、その…」

ためらいを含む声に、ティアナは安心させようと返事をした。

「うん。ライナルトが…私でいいなら」

この悲しげな、しかし美しく儚い微笑を見て、ライナルトは唐突に泣きたくなった。

「…ごめん。俺、わかってるんだ。君はまだ、俺のことを愛していないって。でも、それでも諦められない俺を…どうか、赦して…。俺、頑張るから。君に好きになってもらえるよう、努力するから…」

祈るような囁き。

俯いて涙しそうになる彼をティアナは愛しく感じた。

「大丈夫…」

椅子から立ち上がり、彼に近づく。

「私、あなたに惹かれてるの。だから、泣かないで…」

「ティアナ…」

少女の手が優しくライナルトの顔を上向かせる。



見つめあう二人。




愛しさが込み上げ、どちらともなく唇を近づけた時だった。






「ティアナーー!!!!!!!!!」




悪魔の声が響いた。