地獄からの救いだった。

アンドラスは無理矢理シルヴェスターを連れ帰り、部下として側に置いた。

白い悪魔は金髪の悪魔のようにシルヴェスターを乱暴に扱ったりはしなかった。

「なぜ、自分を?」

救い出された理由がわからず問う。

「べつに。深い意味はないけどさ。強いて言うなら…観察対象?」

人間観察が面白いと言ったアンドラス。

元人間のシルヴェスターにも興味がわいたようだ。

「安心しなよ。僕にはベリアルみたいな吸血癖はないよ。あいつ、変態だよね」


それからというもの、アンドラスを救い主という意味を込めて「主」と仰ぎ、彼に誠心誠意仕えるようになった。

次第に薄れていったベリアルの記憶。


(やっと…解放された、のに…)


吸血されれば嫌でも思い出す。

死んだ方がマシだと思えたあの日々。