大声で魔界にいる部下に命令し、殺させようか。

しかしティアナに気づかれたくはない。

身の安全を守るためでも人殺しを良しとしない彼女。

自分がしようとしていることを知ったら止めるに決まっている。

(気配は確実にここに向かってる。僕が密かに行くしかないか…)

頑張って絵を描いているティアナの邪魔にならないように、という名目で少女の視界から外れるアンドラス。

森へと静かに近寄りながら心の中でティアナに謝罪する。

(ごめんティアナ。すぐ終わらせてくるからね)

そして彼は、運悪く通りかかった人間達を潰しにかかったのだった。









 アンドラスに邪魔者として見なされた一行は、軍隊だった。

先頭には馬に乗った騎士が数名、その後ろには歩兵がずらり。

彼らは遠方での戦を終え、自国に帰還する帰り道だった。

「ライナルト!遅れるな!」

「はいっ!」

老齢の騎士が多い中、一人だけ若い騎士がいた。

彼の名はライナルト。

この若輩者の青年は先輩騎士達の最後尾に従い、馬を駆る。