必死に頭を下げて頼み込むティアナ。

「だから、アンドラス…お願い!!」

「自分がお供ですか?」

「あ…嫌?シルシル…」

勢いで言ってしまったため、申し訳なさそうに尋ねる。

「いえ、自分は構わないのですが…」

そこでアンドラスを見る青い悪魔。

「主が、行きたそうにしているので…自分は遠慮します」

ティアナもアンドラスを見た。

目線の先にはティアナの画材をせっせと準備している悪魔の姿。

「シルヴェスターと二人きりにさせるくらいなら僕が行く!良い!?今日は特別だからねティアナ!」

なぜか行く気満々のアンドラスに、とりあえず喜ぶティアナ。

白い悪魔は悟ったのだ。

シルヴェスターと同じくらい、否それ以上に自分は少女の「お願い」に弱いということを。




 こうして、人生で初めて正式にシャッテンブルクの外に出たティアナ。

魂だけ地獄にお出かけした経験はあるが、あれは当然ノーカウントだ。

アンドラスに荷物を持ってもらい、足取りも軽く大地を進む。

「うわ~!離れて見ると、こんなふうに見えるんだ~!」

シャッテンブルクの町を遠くから眺めるのは彼女にとって新鮮だ。