「ティアナ、この町…好き?」

「え…?何で?」

どこから来たのかわからない質問に不思議がる。

「いや…最近、僕といるより…町の絵を描くことにご執心だからさ…」

呆れるような嫉妬心。

ティアナは明るい声で正直に答えた。

「好きだよ!ここには色々な思い出があるんだもん。ママとパパがいた時もそうだけど…アンドラス達が来てからも、いっぱい増えてったの…」

この町での様々な記憶を思い出しているのだろう。

遠くを見つめて言葉を続ける。

「私はこの町とずっと一緒。だから大好きだし、とっても大切」

穏やかな風が彼女の茶色い髪をなびかせる。

アンドラスはそれを愛しげに見つめてから頷いた。

「それもそうか…。フフッ…ずっと一緒…ね」

意味ありげに笑う彼を理解できずに困惑するティアナ。

「気にしないでいいよ。ほら、描いた描いた」

そう言われては描くしかない。

アンドラスと二人ベンチに腰掛け、彼女は趣味に集中するべく気持ちを切り替えた。