アンドラスは抑揚のない声音で言った。

「僕が部下に命じて多くの命を奪ったんだよ?憎いでしょ?」

当然、憎しみの対象となる存在。

しかし、ティアナは肯定することを拒否した。

「アンドラスはルシファーに利用されただけでしょ?」

「でも、実行犯だ」

空気が冷える。


「やめて…」

ティアナはアンドラスの口から曝される事実を聞きたくなかった。

「やめてよ…アンドラス…」


「それに、僕は君のママを見殺しに――」





「ダメーー!!!!」




唐突な叫び。



「それ以上、言っちゃダメ…」

反響した叫びが彼らの頭上に落ちてくる。



「私、黙ってるから…神様には、内緒だから…」


少女の瞳から溢れ出した雫はこの世の何よりも美しい愛の感情。



「…全く…悪い子だね。ティアナ」

困ったように髪を掻き上げる。

「僕を神の前に引きずり出さなきゃ、良い子にはなれないよ?」

「でも、アンドラスが…罰を受けるのは、嫌なの…」

本気で泣いてしまったティアナを彼は抱きしめた。

「大丈夫さ。僕はとっくの昔に神様に嫌われてるからね。それより…ティアナ…」





――ありがとう



少女の優しさに、白い悪魔はより一層愛しさを募らせた。