「ものすごい寝てたね…」


「麻希が起こしてくれたら良かったのにな」


このブツブツと文句を言っている少女こそ白滝美海で、私、柏木麻希の友人であり
この小説の主人公だ。


「私は、ちゃ~んと起きてって言ったもん」


「嘘だ!!嘘だ嘘だ嘘だ~!!」


そんなの聞いてないと言わんばかりに私の肩を叩く。


「いたたた…もう!美海!!いい加減にーー」


「麻希のせいだからね~」


そう言い残すと、私の得意技、背負い投げを受ける前に逃げ出す美海。


「み~う~!待て~!」


慌てて追いかける私。


「おーい!お前ら~高校生にもなって走んな~」


そんな私達を見て、注意しながらも半ば呆れぎみの先生。


「ごめんなさ~い」


口を揃えて謝る美海と私。


でもそんな先生の小言すら私達は気にしていなくて、ひたすら廊下を走り回る。


7月の暖かい昼休み。


まさかこんなのどかなお昼時に、アイツに出会ってしまうなんて、この時ま、思ってもみなかった…。