「遅い!愛ちゃん達との約束に遅刻するわよ」

ダイニングテーブルに座ってテレビを観ていた母が振り向きながらまた怒る。

母の隣に座っている妹の春華-haruka-が朝から不機嫌にさせないでよ、という視線で訴えてくる。

その視線にゴメン、と口パクで伝えながら冷蔵庫からゼリーを取り出す。

春華は今年で14歳になるやけに大人びた子でいつも客観的な意見ばかり言う。

まぁ、つまりは冷静沈着って感じ。

性格は正反対だけど私達姉妹はそれなりに仲がいいと思う。

マンガの貸し借りは普通だし一緒に服を買いに行ったり気が向いたらメイクも教えてあげてる。

お互いの恋愛相談だってする。

「・・・いただきまーす。」

自分の席に着いてゼリーを食べ始めると母が目ざとくそれを見つける。

「ちょっと、またゼリーだけ?そんなんじゃ倒れるわよ」

「今まで倒れなかったから、だーいじょうぶー。」

ゼリーを口に運びながらテレビを観る。

「・・・また、誓約者達が事件起こしたの?」

「そうみたいねー。今度もまたナントカっていう組織が反乱を起こしたみたいよ。」

誓約者―――不思議な力に覚醒し、自らの化身である“コパン”と誓約した人達。

彼等は私達一般人には無い力を操る。

なんとなく暗い気分になった芽衣はテレビの画面の左上をちらりと見る。

「・・・って!もう8時30分じゃん!」

母の言わんこったない・・・という視線を受けながらゼリーを食べ歯を磨き家を出る。