座り込んだタイルが、冷たい。

ぶつけたお尻が痛い。

なによりも、傷付いた高遠の顔に胸がきしむ。

でも文佳は、なに食わぬ顔で立ち上がらなければいけなかった。

さっと立ち上がり、素早くスカートの裾を直す。

今度こそ高遠に背を向けて、学食の曇ったガラスドアを推す。

「なにしてるの? 置いていくよ」

高遠の様子から頭を切り離して、機械的に云う。

―ごめん。

謝罪は口にしない。

謝っても、無意識の領域を直すことなんて、文佳にはできない。

だから、ささやきは心のなかだけで。

―ごめんね、高遠。

文佳は、誰にも触れられない。

だから、高遠にも、触れられない。