入学した大学は、小さめのキャンパスながら、講義棟から生協、学食と続く桜並木がなかなか見事だった。

今日も晴天。
晴れた空に、桜が映える。

「気持ち悪いなあ、お前」

うっとり花酔い気味の大樹に顔をしかめたのは、同じ学科の三柴だ。

「ほっとけよ。俺のロマンなんだ。ロマン」

「なにがロマンだ、アホ。アタマの方に花咲いてんじゃねえの?」

「うるせ。日文なら西行に倣え。春の花を愛でてみろ」

「ひとりで勝手に愛でてろ。先行くからな」

薄情にも、あっさり三柴は大樹に背を向ける。

「冷てえなあ」

悪態をつきながら、降る花びらに大樹は目を細める。

―ふと。

塗装のはげたベンチに座り、同じように桜を見上げる少女に気が付いた。