春に満開の桜の花。

それが高校三年間、大樹の夢だった。

なんせ、大樹の母校には、広い敷地を誇るくせに、桜と云うものが一本もない。
代わりにあるのが、無数のイチョウ。
校章までイチョウの葉がモチーフとなると、泣けてくる。

そんなわけで。

大樹は多大な桜への期待と云う、方向はずれな希望を抱えて、最高学府の門をくぐったのだ。