駅と大学の丁度中間地点。
商店街の隅っこにある喫茶店『新倉敷』はシンプルな内装の地味な店だ。
学生街にあるのに学生受けをうたわず、いつも空いている。
そんな地味な店構えが気に入って、文佳たちは好く入り浸っている。
紅茶一杯で一時間二時間。
歓迎されざる常連客だった。
目の前に置かれた紅茶に、勝手に角砂糖が落とされる。
ひとつ。
ふたつ。
みっつめで、とうとう文佳は穂波の手を遮った。
「糖尿になっちゃうわよ」
「砂糖は元気になるんだよ」
みっつめの角砂糖を手のひらで遊ばせて、穂波が主張する。
「限度があるでしょ。限度が」
軽くにらんで、しぶしぶ紅茶をかきまぜる。
拡散させるのと沈殿させるのは、どちらが賢明か。
スプーンをひと回しした時点で、ふと考える。
我ながら呑気だ。
「別に、あんたたちがくっつこうが別れようが、どちらでも構わないんだけどね」
すました顔でコーヒーを啜り、あやせが切り出した。
「せっかくの観覧最前列なら、協力の代わりに情報開示をして欲しいものね」
「くちわるーい」
からかうように、穂波がくちずさむ。
心配、されている。
それは結構、嬉しいかもしれない。
商店街の隅っこにある喫茶店『新倉敷』はシンプルな内装の地味な店だ。
学生街にあるのに学生受けをうたわず、いつも空いている。
そんな地味な店構えが気に入って、文佳たちは好く入り浸っている。
紅茶一杯で一時間二時間。
歓迎されざる常連客だった。
目の前に置かれた紅茶に、勝手に角砂糖が落とされる。
ひとつ。
ふたつ。
みっつめで、とうとう文佳は穂波の手を遮った。
「糖尿になっちゃうわよ」
「砂糖は元気になるんだよ」
みっつめの角砂糖を手のひらで遊ばせて、穂波が主張する。
「限度があるでしょ。限度が」
軽くにらんで、しぶしぶ紅茶をかきまぜる。
拡散させるのと沈殿させるのは、どちらが賢明か。
スプーンをひと回しした時点で、ふと考える。
我ながら呑気だ。
「別に、あんたたちがくっつこうが別れようが、どちらでも構わないんだけどね」
すました顔でコーヒーを啜り、あやせが切り出した。
「せっかくの観覧最前列なら、協力の代わりに情報開示をして欲しいものね」
「くちわるーい」
からかうように、穂波がくちずさむ。
心配、されている。
それは結構、嬉しいかもしれない。