『なんでタカトーくん、避けるの?』

さっきとは反対側から、まるっとしたキャラクターシャープペンが伸びてくる。

『助けてやったんだから、話せ』

つやつやシャープの二度目の攻撃。

確かに、ふたりには感謝している。
確かに、文佳は、高遠を避けたい。

でも、離れてみれば、傍にいないことが切ない。

目茶苦茶だ。矛盾している。

―でも。

『傍にいたくないんだもん』

薄く書き込んだ言葉は、改めて見ると、ひどく酷薄なもの。
文佳の感情にそぐわない。

『フミちゃん、タカトーくん、嫌いになった?』

小さく書かれた文字に、首を振る。

嫌いではない。

高遠に笑いかけられると、ひどく安心する。
『高遠に好きになってもらえた文佳』を、はっきりと確認できるから。

―だけど、それはくるりと裏返る可能性がある。

そう、気付いてしまった。

『傍にいると、不安になる』

賢くなった文佳に、残った現実。