授業を終えて放課後、
私は足早に職員室へ向かっていた。
世界史のレポートを提出しに行かなければならないのだ。


「おぉっ、久しぶり」
途中、背後から声を掛けられた。

その人物の正体が分かりきっている私は
テンプレ通り、しぶしぶと振り返る。
「…おう」


「髪切った?ぱっつんぱっつん」
「大分前に。」


彼の名前は上倉。上倉朋季。
出会って15年
腐れ縁の幼馴染みである。

高校3年生になって
文系の私と理系の上倉くんは
フロアはおろか、教室のある棟まで離れてしまったのだが
たまに廊下や階段ですれ違う度
こんな、
気付かない振りをする私に
上倉くんが、年中無休で垂れ流している陽気オーラを振り撒きながら声をかけ引き留める
…といったやりとりを、飽きもせず続けている。


「…じゃあね。ばいばい」
「またなー!」



勿論、私のそれがシカトだなんて本人は気付いていない。
気付くはずもない。

上倉くんはアホなのだ。
畏こくも進学校である我が才原高校で理系トップの頭脳を持つ彼は
昔と変わらず、
幼い。