言ってめも仕方ない文句を並べていると、玄関先の人影に気づく。
広明は一瞬でその人影に目を奪われた。

遠目からでも分かるほど白く、華奢な体つき。黒い髪は腰ほどまである。
身にまとうワンピースは、海の色に染まっている。

ふと、女性が広明に気づいた。

“家の方ですか?”

“…は、はい!”

あかべこの様に肯定すると、女性は再び視線を家へ向ける。

“素敵な家ですね。
海に良くいるんですけど、歩くことがなくて…
こんなに素敵な家があると思いませんでした”

“あ、ありがとうございます”

顔が熱ってゆく。女性を直視できずにいると、急に女性は慌てた様子で

“すいません!人様の家をジロジロと”

立ち去ろうとする女性に広明はとっさに声をかける。
“あ、あの…よかったら、お茶でも”