11時26分 キャンプ場の案内所



「すみません。自転車を借りたいんですが」

「それじゃあここに名前を書いておくれ。一日二百円だから二人で四百円になるよ」

「分かりました」

修介は財布から百円玉を四枚取り出し、サラサラと大人っぽい字で名前を書いた。

「あまり車が来ないからってスピード出しすぎるんじゃないぞー」

「分かってますよ。ではお借りします」

修介は鍵を二つ受け取り案内所の外に出た。



「ねぇほんとに自転車で行くの?」

友也がママチャリを跨ぎながら言った。

夏真っ盛りの昼は何もしなくても身体中から汗が吹き出てくる。

「行きは下りだから良いけど帰りのこと考えると……」

「歩いて行くか? 時間もかかるし帰りは荷物もあるんだぞ」

修介は友也の返事を待たずにママチャリを漕ぎ始める。

友也は心底めんどくさそうに息を吐き、ペダルに乗せていた足に力を入れた。

「先行くなよー。道迷うじゃんかー」