「……今?」

「今」

紫音は柔らかな瞳で彩を見つめる。彩もその瞳に吸い込まれるように目を合わせた。

「楽しい……のかな」

「そう。じゃあ良かった」

紫音はそれだけ言うとまた窓の外に目を向けた。ガタガタと小刻みに揺れるなか、同じ方を見続けた。

彩も窓の外を見た。やっぱり木しか見えない。見続けていても楽しいと思えるところが見つからなかった。


紫音にはどんな風に見えてるのかな……。


バスの揺れる音以外は静かに進み、それからしばらくして木々の間からキャンプ場が見えた。