彩の顔がスッと真顔になる。紫音を掴んでいた手をゆっくりと降ろし、

「分かったよ。行くよ」

ぶっきらぼうにそう言った。

行くって言ったからね、と叫びながら友也は、遠くで立ち止まっている男子の方に走っていった。

「ほんと子供っぽいやつ」

「それが良いところかもね」

紫音は優しく微笑みながら、小さくなっていく背中を見る。

「私に言いたかったことって何?」

紫音は思い出して彩の方に目を向けた。

彩はため息をつく。一度目を閉じ、静かに開いて、


「話す気なくなっちゃった。大したことじゃないしまた言うよ」


彩は友也が走っていったのとは逆に足を進めた。紫音も彩に合わせて足を進め始める。





「違うんだよ……」

「ん? 何か言った?」

「何も言ってなーいよ」