私から目線を逸らして、床を見つめながら、消え入りそうな声で、佐々原先輩は言った。
「ハルの双子の弟を、事故で亡くしてるんだよ」
“詳しいことは、俺もよく知らない”
先輩は、そう、最後に付け足した。
「親友なのに、俺…
なんもしてやれてないんだよ…。
ハル、たまに悲しい顔すんだよ。
楽しく話してても、急に暗くなっちゃったりさ。
でも俺、そんなときにも、なんもいいこと言ってやれないし!
悔しいんだっ、ハルを支えてやれないのが…っ!
でも、茜ちゃんなら、きっと、ハルを支えられる。
お願い。
ハルを…助けてやって」
「…わかりました…っ
できる限り、やります。
私だって、先輩のこと、少しでも幸せにしたいです」
「あ…ありがとう、茜ちゃん。
本当にありがとう、ほんとに…」