次に先輩に会ったときには、今日あったことを思い出さないようにしようと思った。

そう、電車に乗っている間に考えた。


先輩は今、誰を好きで
梨花は今、誰を好きで

……解りきったことといえば、自分の暴走する気持ちだけ。



最近、先輩が近いような気がしてた。

自意識過剰かもしれないけれど、たしかにそう感じてた。



偶然が偶然を呼んで、
先輩が私の前に現れる。



それは幸せでもあって

それでいて魔法のようなものだった。



魔法といっても、おとぎ話にでてくるような、いわゆる『普通の女の子が綺麗なお姫様に大変身する』系のものではなくて、もっと恐ろしいもの。

快楽の罠にはめて、抜けられなくなってしまうような…

――言うなれば、『麻薬』


もちろん、先輩はそういう悪い人でもないし、そんなものに一切関わりのないような、清潔感のある人。

それでも、ちょっとした優しさ(つまり今日のような出来事)の中に、そういう成分が入っている。

ほんの、すこし。