咲が引っ越すと聞いたとき、幼いながらも私は、その意味を必死に考えた。
――さきちゃんと、もうあえないの?
――さきちゃんは、とおいところへいくの?
そして今。
あの頃に比べれば、咲も私もだいぶ成長した。
嬉しい、楽しいことばかりだけでなく
嫌なこと、黒い感情も、覚えた。
それなのに咲は
そんな、人の醜い部分を、表に出さない。
昔から、変わっていないと思った。
一番に誰かのことを考えて
心からその人を笑顔にしようとする。
自然と咲の周りには、人が集まるのだろうな。
そう思えるほど、咲は優しかった。
*
そんな咲に比べて
私は…
だめだなぁ、ほんとうに。