逃げよう。



そう思ったとき……。



「あの、杏里ちゃんですよね?」



女子高生のグループがあたしに詰め寄る。


わわっ…



「え、あの…」



「その香水、メンズでしたよね!?
誰にあげるんですか?」


「もしかして、彼氏ですかぁ?」


「それ杏里ちゃんのオススメですかぁ?」




なんか、いろいろ聞かれて、分からない。



だけど、こんなに囲まれたのは初めてで…。



何だか怖くなってしまう自分がいた。




と、そのとき



「はい、そこまでね?
あんまり騒ぐと、事務所も黙ってないよ?」



声を聞いて、パッと上を向く。



なんで……大翔…?



「えっ、もしかして杏里ちゃんの彼氏?!」



大翔を見て更に騒ぎ出す女子校生だけど…。



「そんな風に子どもには見えちゃうの?
一応俺、マネージャーなんだけど?

君たち、見て分からない?」




キラキラと王子様スマイルで、ニコッと微笑めば、皆イチコロ。



さすがだよね。



「ほら、杏里行くぞ」



大翔はあたしの腕を引いて走り出す。



優里花さんもそのあとを、付いて来る。



「大翔、なんであそこにいたの?」



走る背中に問い掛ける。



「たまたま。
杏里が囲まれててビビったよ」



すみっこの影に、あたしたちは入る。



そして、大翔はあたしに帽子を被せた。



「被っとけ」



優しい笑みに頷いて、あたしは帽子を押さえて見せた。