「…杏里ちゃん、それ真面目に言ってる?」
優里花さんの言いたいことが分からなくて、首を傾げる。
至って真面目だし、本気。
だって、優斗さんとは、真剣にお付き合いしてるもん。
お互い、目を合わせたまま、少し時間が過ぎて。
いきなり優里花さんが、豪快にため息をついた。
「ほんと杏里ちゃんって、鈍感よね」
いつだか言われた言葉。
「ええ?急になんですか?」
あたしも優里花さんから頂いた、砂糖が多めの珈琲に口を付ける。
「その時点で、鈍感決定ね。
よく言われるんじゃない?」
「まぁ、何度か…」
ほんとになんで鈍感と言われているか分からなくて、モヤモヤとする。
すると、そんなあたしに気付いてか、優里花さんはあたしの隣に座る。
そして、グリグリっと、頬を抑えた。
「ちょっ、優里花さん?!」
びっくりして優里花さんを見れば、彼女は妖艶な笑みを見せた。
そして、制服から覗くあたしの鎖骨に指を滑らせる。
その行動が、雰囲気が妖しくて、妖艶で、痺れる。
ちょっと優斗さんと似てるなぁ、なんて思ったとき、優里花さんは、あたしの耳元に、そっと唇を寄せた。
一瞬、セクシーな香水が香る。
「あたしが、言いたかったのは、
…優斗に杏里ちゃんを捧げるってことよ」
「えぇっ!?」