正直もう、なにがなんだか。
衝撃的という三文字じゃ片付くわけないし、大して出来のいいものでもない脳みそは完全に思考を停止していた。
「けど…うん」
薫が半妖だということを知ったのは少し前だ。
そのことに関しては異論はない。
私は実際、気持ちが昂ぶって変化(へんげ)した彼をこの目で見たのだから。
だけど、敵って?
なぜ?
すぐにその答えは書かれていた。
関高築町に伝わる、血にまみれた歴史。隠ぺいされた過去。
四家の対立。
不幸にもその抗争に巻き込まれた私の祖先─椎名と平坂は因縁の関係にあったらしいのだ。
「なんていうか、お伽噺……だなあ」
平和に生きてきた自分にとっては本当に遠い過去の話だ。
これが事実にせよ作り話にせよ、正直に思ったところを白状すれば。
自分の祖先が平坂さんと仲違いしていたからって……私まで薫と敵対してしまっては意味がない。
という感想意外、抱けなかった。
だって、それこそ同じ歴史の繰り返しのような気がする。
具体的に四家の間で何が起きていたのかまでは書かれていなかったけれど、それは神崎くんが説明してくれるのだろう。
「ごめん、お待たせ」
「あ、ありがとう……おにぎりだ…!」
「いっぱいあるから、遠慮しないで食べて」
「う、う、ありがとう」