「サチは、何の妖なの?」
師匠は答えず、海斗の瞳を見つめ薄ら細めただけだった。
「…そんなこと私が知るか」
「訊いたら教えてくれるかな」
「訊いてみればいいだろう。喰われない保証はないが、死に目くらい会いに行くのは勝手だ」
ツーンと横を向いた師匠を撫でた。
良かった。また喰われるだの生気を吸われるだの、良い顔をしないかと思ってたけど、さすが大妖の白狐は懐が大きい。
海斗はやっぱり、もう二度とあの子と会うことが許されないと思ってたんだろう。一瞬驚いた表情をしたけどすぐに笑って頷いた。
「海斗。私も明日、一緒に行っていい?」
きっと、我が家に幸せを呼び込んだのはあの子だ。あどけない笑顔が脳裏に浮かぶ。
これまた良く似た笑顔で海斗は何度もうなずいたのだった。