「何してるの、地べたに座り込んじゃって。帰るよ」
「…あぁ、今行くー」
手を振り声を張ると、姉ちゃんは腕でマルを作った。
木の上のサチを見上げてみるけど、枝と葉っぱに隠れて顔は見えない。
真っ白いワンピースに木漏れ日が落ちて模様をつくる様はひどく綺麗で、どこか遠い存在だということに今更気づく。
「また、来るから。明日も明後日も…ううん。ずっと、ここへ来るから!」
そう言い、走り出す。サチの返事は聞きたくなかった。完全なおれのエゴだからだ。
もし明日行ってサチがいなくても、会えなくても、それでもいい。
想うことはできる。
背中にあった命の音とぬくもりが、頭に焼き付いてどうしようもないくらいに心が苦しかった。