「なあに?カイト」


くすくす、くすくす。離れているのに柔らかな声が、耳元で聞える。風がすすぐ木の葉の音の合間、まるで木と呼応しているかのような。



「…ううん。やっぱなんでもない。早く怪我、よくなるといいな」


ありがとう、とサチが言うと同時に、真っ白い鳩が木から一斉に飛び立った。雲一つない快晴の青空に広がっていく大群の鳥たちはきれいで、思わずあんぐりとする。


「ここの木には、よく鳥たちが集まってくるんだ」


茫然と空を眺めて暫く、あ、と思う。あの鳥は。何かを言いかけたサチに重なるようにして聞きなれた声が伸びる。


「海斗ー」

「あ、姉ちゃん」


少しだけ遠くから、姉ちゃんが手を振っていた。