「…なんで木の上にいるんだ?こっち、降りてよ」

首を傾げると、サチは静かに笑った。


「ごめん。昨夜、顔を怪我しちゃってさ。見られたくないから、今日はここで話してもいい?」

「えっ、怪我したのか!?」

「あぁ。でも平気だよ」


病院には行ったか、と訊ねるとそんなにおおごとじゃないとサチが元気に笑い飛ばしたので少し安堵する。


痕でも残ったら大変だ。ましてやサチは女の子なんだから。言いたいことは山ほどあったが全部飲み込んで、木に寄りかかって座り込んだ。


とくん、とくんと。


不思議だった。木から、脈打つ音が聞こえる。命の音だ。



「カイト。ありがとう」


「え?なんだよ急に」


思いもよらないほど、優しい声が降って来たので狼狽してしまう。



「ぼくは君の傍に居てもいいの?」