ぺろりと冷やし中華を平らげたあと、俺とサチはテレビを見ながら談笑していた。ひょっこりリビングに現れたシロをみると驚きつつ抱き上げ、頬擦りをした。
「わあ、真っ白だ!かわいいっ。これ狐?」
「そうだよ。珍しいだろ」
「うん、すごいや!こんな綺麗な毛色の狐、初めて見た」
かわいい、かわいいと連呼するサチにシロは終始ぶすっとしていたが抵抗はせず。目が合ったのでとりあえず苦笑いをしておいた。
「それじゃあ、ぼくはこの辺で。本当にありがとう。美味しかったです、冷やし中華」
「暗いし危ないから、家まで送っていこうか?」
「ううん、大丈夫です」
それでもなお心配する母に「本当に平気」と言い、サチは頭を下げると白いワンピースを翻し、家から出て行った。
「なんだか不思議な子だね。もしかして海斗の彼女?」
「……は!?っ違うし!!」
「えーアヤシー」
多分、いまのおれの顔は真っ赤だろう。そんなおれを見て、姉ちゃんも母ちゃんも笑っていた。
ただ、この時のシロの眼だけは真冬の氷柱みたいに、尖っていた。
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サチと出逢ってから、我が家にはやたらいいことが起こり始めた…気がする。
例えば懸賞が当たったり、安売りの最後の1個を手に入れたりとか。些細なことから少し大きいことまで矢継ぎ早に幸運が舞い込んでくる。─サチは、やっぱり不思議だ。