「千歳…」
「でも夢じゃなかった。こうして、君がまた来てくれた」
千歳さんが指差す先にあるスケッチブック。桔梗は震える手でそれを開き、涙ぐむ。私のいる方からも見える、綺麗な女の人の肖像画。
ふたりは繋がってた。ずっと、ずっと想い合ってた。
「千歳さん、桔梗、行ってください。歩けなくても大丈夫です」
お願い、師匠。呟くと師匠は珍しく何も言わず室内を歩きベッドの足元へ寄る。
「あの場所へは彼が連れて行ってくれます」
「っ確かに妖に乗れば見えなくなるが…!でも、どっちにしろ千歳が布団にいなければすぐに…」
「それも大丈夫」
棚に置かれた病衣を手に取って笑った。髪の長さも色も違うけど、多少のカモフラージュにはなるだろう。電気を消して部屋を暗く、布団に丸まっていればいい。病衣をとるとき控えのカルテを勝手に見てしまったけれど、検温の時間もまだまだ先だ。
「私がここに残るから」