細い腕に繋がるチューブ。狭い病室に響く水滴の音は、雨のようだ。



「死んじゃうからもう会えないって言ったのに…騙してたの、ばれちゃったか」


「いや。騙していたのは私の方だ」


桔梗は、全てを話すのだろうか。でもそれを伝えたら、もう二度とここへはこれなくなる。



「氏神様に聞いていた言葉を、思い出した。どういうわけかすっかり忘れてしまっていたんだ。─私たち花の妖は、選ばれた者のみ人間になれると」



「え…!?」



「だが二度と花へは戻れない。花のままなら例え散ってもまた、生まれ変わる。半永久的に生き続けられるのだが…一度人になれば人間とほぼ同じ時しか、生きられない」