「初めまして。椎名杏子といいます」


彼は、わけが分からない、という顔で私を見つめた。


無理はない。


自ら手を切った友人が、再び目の前に現れたのだから。



「千歳。すまない、お前が消えてからの毎日はどうも寂しく…ほかのことを考えれば考えるほど、何も手につかなかった。勝手ながらもう一度会いに来てしまった。すまない」


そっとベッドの脇に近寄った桔梗に涙ぐみ、千歳さんは視線を落とした。



「馬鹿だなあ。もう会えないって言ったのに」


「でもまた、会えた」


「…」