桔梗は何も言わず頭を下げ、私の手を引いた。 「桔梗…」 「何も言わないでくれ。すまない─」 桔梗の震える声に押し黙った。 壊れていく体に、心に、今も彼は耐えぬいているんだろうか。バスに乗り込み、ひやりとした窓に額を付け目を瞑った。 バスと電車を乗り継ぐと、ほどなくして病院へ着いた。大きな病院だ。 まるで千歳さんを閉じ込める監獄のようだ。