「もう別れてからひと月だ。あれがどこへ行ったのか…やはり私のことを人でないと気づいて離れて行ったのだろうか…」


彼女は悲しげな視線を、窓の外へ投げかけた。嫌われてしまったのだろうか。という縋るような声に唇を噛む。




「人はそう簡単に、今まで好きだった人を嫌ったりしないよ」


「しかし…」


「桔梗の大切な人のこと、信じてあげて」



─会わせたい。桔梗の彼を想う気持ちは本物だ。私は傘も持たずに家から飛び出した。




「まったく…」


後から追いついた師匠の背中に乗せられ、強まる雨に目を瞑る。