こんなに私は人間なのに。なぜだろう、目の前にいる千歳が遠い。


「うん、上出来」


彼は絵と私を交互に見た。


「大切にするよ」


彼はにこりと笑って丘を下りていく。いつもなら「また明日」と言い手を振るはずなのに、その言葉は落ちなかった。不安に思い呼び止めると、代わりに出てきたのは別れを告げる言葉。



「…もう二度と、ここへは来ない。勝手でごめん、どうか許してほしい」


「え」


「元気で」


千歳、と呼ぶ声すら出ない私はただ茫然とその小さくなる背を見つめていた。




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「それきり、あいつとは会っていない。何度も丘で待ったが、便りも何も来なかった」