「いや?そういうわけじゃないんだけどね…ここじゃあ自由なんてないんだ。縛られてばっかりで退屈。もっと、沢山の物を見たい」


彼の手が、おもむろに私の手に添えられる。


視線がかち合った。



「できれば君と一緒に」


指が、ゆっくりと絡まる。長さの違う指に、どうしようもなく切なくなった。…心まで人に寄ってきている。



「…冷やかしなら許さないが、ついて行く」


「ありがとう。冷やかしなんかじゃないよ」




それでも所詮、私は花の妖。この丘を統べる氏神様がどういう気まぐれか私を人の姿に仕立ててくれた。


けれど、いつそれが切れてしまうかもわからない。不安定で揺れ続けるわたしの身。



「いつか、叶うといいな」


どちらが呟いたかわからない言葉にもう片方が頷いた。