「なにを、やってる…!」
思いきり突き飛ばすと私と彼はもつれるように丘を転げた。柔らかい地面に救われ、幸い土に塗れるだけで命は助かった。
男は大層驚いた風に私を見た。その眼に映りたいと思ったのは自分なのに、いざ見つめられると気恥ずかしくて敵わない。
「命を自ら捨てるなど…勿体ない真似はよせ」
「…驚いたな。見られちゃったか。どうせどこへ行ってこれをやっても止められちゃうから、逃げ出して人がいないこの場所を選んだんだけど、ここにもいたんだ」
人ではない、と言いかけたがそれ以上彼の眼が曇るのは耐えられないと思い、頷いた。