男は、何をするでもなくぼうっと丘の上から街並みを見つめていた。毎日のように、やって来た。
朝から夕方まで、町並みを眺め、時々、寝転んで寂しそうに空を見上げたりすることもあった。
そのまま、瞼を閉じることも。
その姿がまるで死んだ風に見えて胆が冷えた。
彼に、話しかけてみたかった。
会話してみたかった。
その眼に映りたいと思った。
声が聞きたい。
そんなある日、転機が訪れる。
彼はいつものように丘へ訪れると、不意に紐のようなものを近くの木へ括り付けたのだ。いくら人のことに疎いとはいえ、奴が何をしようとするかなど察しがついた。
細い首が絞まりかけたとき、こらえきれず私は飛び出した。