「先に少し…昔話をきいてくれるか?─私と彼の出会いは、唐突だった」
--------------------------
【桔梗side】
暖かな6月の終わり。まだ花の姿のころの自分。仲間と、風に揺られる日々。天道の恩恵を受け、雨の恵みで暮らす、気ままな生活は楽だった。
【珍しい。なにやら人間がやって来たようだ】
人?顔を上げると、ゆっくりと私たちを遠慮なしに踏みしめ 歩いてくる男が。驚いた。ここへ来る人間など端から珍しいのだが、愛でるはずの花を容赦なく蹴散らすなんて。
【なんて乱暴な奴!これだから人間は】
仲間は口々に文句を言っていたが私はそれどころではなかった。丘から、遠くを見つめる瞳に妙に苦しくなり、魅了されてしまった。