着々と進められていく準備を微笑ましく思いながら眺めた。やがて、薄い色の羽衣を纏った彼女が泉の傍に立った。
「愛しい人の子。ありがとう」
儚く笑った彼女のなんと綺麗なことか。詩はどうやら人の言葉ではないらしく、独特の優しい響きで心のよどみすべてを払拭するような声だ。
なんて優しい詩。
熱を持っていた体も、心なしか楽になった。この詩には、癒しの力でも宿っているのだろうか。
「綺麗…」
翡翠様の詩を追うように鈴や太鼓、笛も控え目に鳴り始め、従者の人たちが舞いを始めた。夜なのに淡く光る彼女たちは幻想的で、息を呑む美しさだ。
不意に遠い記憶、覚えているはずもない祖母の記憶がフラッシュバックした。私と同じ黒髪を翻して笑う、若かりし祖母。
「っ…」
巫女として誇り高く生き抜いた遠い彼女を想う。