「…よか、った─」


「杏子!ありがとう、ごめんなさい…本当に、なんてこと」


いよいよ限界なのか今度は私が地面に崩れた。無事呪いから解放された翡翠様は、自身の着物が汚れるのも厭わず私を抱いた。



「大丈夫、です。多分、寝てれば毒気は抜けるから」


「っ、一体誰がこんな真似を」



顔を歪めた翡翠様にひとりの従者が名乗りを上げた。


「申し訳ございません、申し訳ございません。人の言葉を信用できず、狐狸妖怪が化け私どもを謀っているのではないかと疑い…妖には効かぬ毒を盛ってしまいました」



彼女はさめざめと泣き、地面に頭をついた。師匠は舌を打って鼻を鳴らした。



「信頼できんなら初めから頼らなければいい話。杏子、どうする。私は今猛烈に腹が立っている。こいつを今すぐ引き裂いてやってもいい」