「…大丈夫」
ゆっくり足に力が入り、立ち上がる。意識は未だ不安定だが、やれる。いいえ、やるしかない。
「杏子…っ」
「翡翠様。折角ここまできたんです。やりましょう」
「でもっ」
声を張ったせいか、ひどく咳き込む翡翠様の肩に触れる。いやに熱をもった体に、本当に時間がないと悟る。
「私は巫女です。けれど人柱になんてなりません。必ず姫様をお助けします」
息を呑む従者たちに向き直って頭を下げた。失敗は許されない。
「陣へ」
頷いた翡翠様が地面に描かれた陣の中に足を踏み入れ、中心に立った。
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